プログラミング教育が義務化されてから、はや数年が経ちました。
学校の先生も子供たちも混乱しながらなんとか進んできた数年ですが、プログラミング教育の実態は謎に包まれています。
特に中身である「プログラミング」について、どんな風に学ぶのか、具体的に何を学ぶのかということについては、イマイチパッとわからない親御さんも多々いらっしゃいます。
今回は、学校教育において、特に小学校へ焦点を絞って、プログラミング教育の現状をお伝えしていきます。
もくじ
小学校におけるプログラミング教育の認知度
最初に私たちが調べたのは、親御さんたちのプログラミング教育への認知について。
「小学校では具体的にどのようなプログラミング教育が行われているか、知っていますか?」
という質問を当教室に通うキッズの保護者の方々10名にアンケートを取りました。
すると、以下のような結果に。
親御さんの「わかりません」は10人中9人。
10人中何と9人の方が「知らない」「全くわからない」という回答でした。
この結果をご覧になって
「回答者数が少なすぎる!」
「たまたまこの地域だけこんな回答になったんじゃない?」
と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。
(残念ながら返ってきたアンケートは10件しかありませんでした)
ただ、これほどきれいに
「わかりません」
という回答の状況を考えると、これが日本の親御さんたちなのかもしれません。
世のお父さんお母さんたちは、新しく義務教育されたプログラミングについて、何一つ知らないまま学校に通わせているのが現状だと思われます。
小学校のプログラミング教育ではプログラミング言語を授業で習うわけではない
残念ながら、日本の小学校のプログラミング教育においては、プログラミング言語がわかるようになる授業、プログラミング言語を使ったプログラミングの授業はほとんどされていません。
以下のような理由がその根拠です。
- プログラマーら開発者らが使うプログラミング言語はどれも専門性が高く、小学校で教えられる人材は現在皆無である
- 小学校で配布されているパソコン、タブレットパソコン等は簡易的な性能のものがほとんどであるため、高性能な環境を必要とするプログラミング言語学習は非現実的である
- 小学校で「プログラミング」という科目は設けられていないため、プログラミングの授業の進捗は滞りやすい、授業が頻繁に実施されることはあまりない
このような実態を考えると、とても「プログラミング言語を使った学習」というものは不可能のように思われます。
従って、小学校でのプログラミング教育を受けたところで、将来に生かすことのできるプログラミングスキルが持てるようになるわけではないことを理解しておきましょう。
実際に小学校の現場ではどのようなプログラミング教育が行われているのか?
日本中の多くの学校で取り入れられているのが、文科省が公開している「プログラミング学習の手引き」にも掲載されている「ビジュアルプログラミング言語」というものを使った授業です。
ビジュアル型プログラミング言語とは
「前に進む」「角度を●度にする」といったような命令がブロックで用意されており、それらを並べるだけでキャラクターを指示通りに動かしていくことができるのが、ビジュアル型プログラミング言語です。
子どもだけではなく、大人でプログラミングを専門的に学んでいない人でもプログラミングを教えることができますので、ほとんどの全国の小学校で採用がされています。
和歌山県の実例
当教室のある和歌山県のとある小学校に通うキッズたちにインタビューしました。
彼らが5年生当時に体験したプログラミングの授業は、何と1コマの授業だけ。
何をしたかというと、「信号機をつくってみよう」というテキストを使って、実際に信号機を作ったようです。
当教室でも取り扱いのある、株式会社アーテックが提供するコンテンツ「エジソンアカデミー」は、ブロックでロボットや信号機、カンタンなゲームマシンを作成し、思い通りに動かすことをプログラミングすることで実現する、といった内容です。
この教育コンテンツが和歌山県で採用されていますので、この教育コンテンツを使ってプログラミングの授業を行ったものと思われます。
どういう流れで授業を行うのかというと、次の通りです。
- ロボットを制御する電子基盤や、ブロック、LEDライトなどの部品を手順書を見ながら組み合わせ、信号機を作る
- ビジュアル型プログラミング言語を使い、信号機の動きをプログラミングする
ex)スイッチを押すと〇秒後に青になる…そのあとは〇秒経つと赤になる…といったような動きをプログラミングで設定する - 作ったプログラミングをパソコンからケーブルで基盤に転送、きちんと動作するかを確認する
- うまくいかない場合はどこに原因があるかを考え、修正し、再度動きを確認する
このような繰り返しが「エジソンアカデミー」のコンテンツ内容です。
ただ、この内容を毎週何度も行う、というのは現実的に考えると非常に難しいと言えます。
少人数であればまだ、教師が一人で対応できますが、うまくいかない事態が大勢の生徒に発生した場合、一人ひとりをまわって教師が対応するのは困難です。
そういった点から考えると、1年に1度だけ、うまくいっても数回だけになってしまうのはある意味仕方がないことであるかもしれません。
また、学校の先生も慣れないことを自分の全クラス生徒に教えることはなかなか難しいものです。
和歌山県でのプログラミング教育はこのような実態となっています。
論理的思考力を身に着けることがプログラミング教育の狙い
「将来使えるプログラミングスキルが学べなければ意味ないじゃん!」
というお声も聞こえてきそうな気はします。
ですが、この日本のプログラミング教育、決して無駄ではありません。
今までの学校での勉強は「暗記」が多く使われてきた面があり、
「なぜこうなるのか」
「うまくいかない理由はなぜなのか」
「この仕組みは一体どうなっているのか」
といったような疑問について考えることが難しい子どもたちがたくさんいました。
そのように論理的に考えていくことが難しい子どもたちに対して、プログラミング教育を通して自分の力で考えることができる機会を提供する、力をつけてあげる。
これが日本のプログラミング教育の目的であると言えます。
外国のプログラミング教育とはちょっと違う視点で教育を進めているのは間違いありませんが、難しいことを一切なしにプログラミングの世界に入っていける、論理的に考えるトレーニングができるようになったのは、これから先にとっても非常に良い試みであると言えます。
〇このブログ記事のまとめ〇
- 学校教育のプログラミングの授業では、本格的にプログラミング言語を使った授業が行われるのか
- プログラミングの授業の詳細はどんなものなのか
- 将来的に使えるプログラミングスキルが身につくのか
というように焦点を絞ってお伝えしてきました。
筆者の偏見も多々ありますが、日本のプログラミング教育は案外悪いものではない、ということを多くの方にお分かりいただけると幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。